企業に勤める男性と、大学病院でインターンをしている結婚相手の二人から聞いた話です。
あるとき、この男性にまたとない出世のチャンスが訪れました。
彼のために会社が新しい部署を新設するというのです。
一生に一度あるかないかのような昇進の話に、彼は興奮しました。
ところが問題は、そのためには1000キロも離れた遠くの町に引っ越さなくてはならないということでした。
男性は考えた末、その話を辞退しました。
その理由は、奥さんが病院のインターンで忙しくて大変だったからです。
彼女は毎日十二時間の勤務に加え、四日に一度は夜勤が入ります。
とても引っ越せるような状況ではありません。
この男性らは毎月、お互いのスケジュール表を見ながら、一緒に数時間過ごせる休みをいつ取るか考えます。
そういうとき、彼女はいつも、男性が彼女に予定を合わせてくれるように頼みます。
ようやく二人そろって一週間の休みが取れたとき、彼らは海外旅行に行きました。
男性が出世のチャンスを逃してまで自分に合わせてくれたことに、彼女は心から感謝しています。
「皮肉な話ですよね。私は結婚したばかりのころ、野心家で仕事の鬼のような彼に魅力を感じていたのですから。
それが今では、私のために自分を犠牲にしてくれる彼の姿に、改めて魅力を感じているのです。
二人にとって一番大切なのは何かということについて、彼の意識が変わったのです。
それから私たちは、二人で一緒に暮らすということの意味がわかってきたんです。
インターンが終わったら、私、彼が行きたいところにならどこへでもついて行きます」と彼女は言っています。